そもそもの始まりは、リゲティの録音(その当時は、まだCDはリリースされていませんでした)を聴いてブッ飛んだ廻 由美子が、東京にレクチャーで来日した時に会いに行ったのがヘルさんとの出会いでした。
いただいた楽譜には目玉や手のひらのマークやらアルファベットやらが満載!作曲者の原田敬子さんは「身体中からいろんなものがどんどん芽吹いてきちゃうような感じ」などと楽しげに言い、さてヘルさんといよいよ合わせてみたらこれが本当に凄まじく、身体、脳、五感をフル活動させ、相手の「気配」を、それが気配になる前(!)に感じ取り、反応しなければならない、という原田氏ならではの作品で、2人とも全身にビリビリとアンテナを張り巡らせて演奏しました。
テッセラ音楽祭でのトーマス・ヘル初登場は大人気を博し、終演後には長蛇の列。皆さん「どうしても素晴らしかったと言いたい」という気持ちが溢れていて、ヘルさんは終始ニコニコしながら「ありがとうございます」と嬉しそうでした。
その列には作曲家の北爪道夫、権代敦彦 各氏も並んでいました。
音楽家同士の出会い、そこからまた音楽が生まれていきます。
第15回の音楽祭では、ヘルさんは北爪道夫:「彩られた地形 第2番(1997)」を演奏し、また、2022年にはトッパン・ホールでのリサイタルで権代敦彦:「Diesen Kuß der ganzen Welt(2011)」を演奏しました。
トーマス・ヘルと廻は2013年にドイツのヴュルツブルグ音楽大学でコンサートやマスタークラスをします。そこはシュテファン・フッソングが教えている大学でもあったので、みんなでまたビールを飲んだり楽しい時を過ごしました。音楽祭が繋いでくれたミュージシャン・シップの楽しい思い出です。