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公演レポート!

by 廻 由美子


前回の「シェーンベルクとカンディンスキー」についてはこちら


5月11日、12日、シェーンベルク・シリーズが開幕しました!

まずは

5月11日(土): 寺嶋陸也(ピアノ)〜光を求めて〜

プログラムは

J.S.バッハ: イギリス組曲第6番 ニ短調 BWV811(1720年代)

A.シェーンベルク:6つの小品 op.19(1911)

岡田京子: 挽歌

F.シューベルト: ピアノソナタ 第17番 ニ長調 D.850 (1825)

寺嶋さんがピアノの前に座ると、客席が期待感でいっぱいになるのでがわかります。

そして、バッハを弾き始めたその途端から、空気が鼓動を打ち始め、声を持って語り始めます。

バッハ自身の創作の興奮がそのまま伝わってくる演奏で、もう客席は熱気に包まれました。

続くA.シェーンベルクでは、音楽の世界がバッハ、から古典、ロマン派へ続き、そしてシェーンベルクへいくのは、全く自然な流れだっのだと深く納得。

マーラーの死を追悼する6曲目の鐘の響きからは、その後戦争でガラリと変わっていくヨーロッパ文化への追悼も聴き取れるようでした。

岡田京子さんの「挽歌」については、寺嶋さんがトーク

「岡田さんはアイヌや朝鮮の音楽にとても関心を寄せていました。この作品も、次々とメロディが出てくるのですが、メロディの特徴がほとんどアイヌ民謡と同じなんです。3音音階、例えば”レ・ミ・ソ”のような音階でできていて、同じことを繰り返す、というアイヌ民謡の特徴がメロディに、そして曲そのものの構造に活かされています。」と貴重な解説を聞くことができました。

また、「挽歌、というのは棺を引いて歩く時に歌う歌」ということで、「悲しみ」というよりも、みんな土に還っていく、というような人生観を感じました。

最後のシューベルトの前に、少しお客様にインタビュー。

あるお客さまは「いろいろな時代の曲なはずだけど、みんな繋がっていて、大きな環のような感じ」と素晴らしい感想を寄せてくださいました。

そして最後のシューベルトは、「生きる」というか「今、生きている」喜びが、歌への限りない感謝を込めて演奏され、寺嶋さんとシューベルト、そして客席がひとつになっていきました。

終演後、たくさんの人から「この場に居合わせたこと、本当に幸せでした」という感想をいただきました。

素晴らしい演奏を、本当にありがとうございました!


続く翌日は

5月12日(日): 工藤あかね(ソプラノ)x廻 由美子(ピアノ)〜背徳と官能〜

A.シェーンベルク:「ブレットル・リーダー」(1901)

A.シェーンベルク:「月に憑かれたピエロ」(1912)(エルヴィン・シュタインによるピアノ・リダクション版)


工藤あかねさんと廻とのコンビは2017年テッセラ音楽祭でのシェーンベルク「グレの歌」に始まっています。

リハーサルはもちろん、お喋りもワイン飲みも全てが音楽に繋がっていき、工藤さんとセッションをすると毎回新しい発見があります。

今回、まずは「ブレットル・リーダー」でコンサートの幕を開けました。

この歌集は、シェーンベルクが1901年にベルリンのキャバレー「ユーバー・ブレット(超寄席)」の座付き作曲家をしていた頃のものです。

華麗でユーモアに富み、ベルリンというよりもやはりウィーンの「背徳と官能」な香りプンプンの歌の数々に、「これがシェーンベルク?」と驚きの表情のお客さまたち。

歌詞についても「僕はムラムラ」だの「たくさんの女性とブンブンするんだ」とか言ってるんですよ、とバラし、お客さまもニヤニヤ。

続く「月に憑かれたピエロ」について、楽しく聴いていただくために2人で少し解説。

工藤「ブレットル・リーダーと地続きです。コワイ、難しい曲というイメージがありますが、こわくないです」

「バッハ、モーツアルト、スカルラッティ、シューマン、ワーグナーなどいっぱい入っているんです」

工藤「喋るような歌い方だったり、声や音程もいわゆる「歌」とは違ったり、でも細部に至るまで全てキッチリ楽譜に書かれています」

「だから工藤さんが勝手にヘンなことやってるのではありません。そういう楽譜なんです」

工藤「ピアノは、フルート/ピッコロ、ヴァイオリン/ヴィオラ、クラリネット/バス・クラリネット、チェロ、ピアノ、を一人でやるんですよね」

「最初は「ムリっ!」と思って死にそうに」

など、2人でトークし、いよいよ2人で「月に憑かれたピエロ」です。

2人でこの素晴らしい作品に出会えたこと、そしてその作品世界に入り込める幸せを感じながら演奏。

工藤あかねさんは「背徳と官能」の香りを濃厚に漂わせながらも、しかし決して「品格」を失わない。これぞインテリジェンスのなせる技でありましょう!

廻の弾くピアノ、ベーゼンドルファー・インペリアルは、サラブレットでありながら、実は鐘、チンバロン、手回しオルガン、チター、など多彩な音色をDNAに持っているので、シェーンベルクの多彩な音を表現するのにピッタリ!

終演後、「パントマイムや影絵、舞踊みたいだった」「長い曲と覚悟してたけアッという間に終わった!」「ピカソのアルルカンがよぎった」という嬉しいお声をたくさんいただきました。

また、「バッハ、モーツアルト、シューマン、この曲中のどこにいるのかもっと知りたい」という声や、元詩(アルベール・ジローのフランス語詩)は、ヴェルレーヌの影響が濃厚、というとても興味深いお話もお聞きし、「月に憑かれたピエロ」をもっと深掘りしていきたいという思いを強くいたしました。

ご来場の皆さま、本当にありがとうございました!

次回の公演は

7月6日(土):HISASHI(vo)x 廻 由美子(pf) 

カバレットvol.3 〜笑いと抵抗の文化・ホランダーと林光〜 

です。お楽しみに!


廻 由美子

2024年5月17日・記



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