by 廻 由美子
F.ホランダー:「また恋したのよ」 piano・arr:廻 由美子
前回の「林光のソング・歌詞大意」はこちら
【新しい耳】2024 シェーンベルク・シリーズ
7月6日のHISASHI with廻 由美子〜カバレット・ソング〜
このコンサートで取り上げるフレデリック・ホランダーと林光、2人の作曲家の共通点は何でしょう。
それは、2人とも「劇場」、そして「映画」と深い関係にあった、ということではないでしょうか。
ベルリンのキャバレー・シーンで大活躍していたホランダーですが、1930年にはジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督「嘆きの天使」でマレーネ・ディートリッヒ歌う「Falling Love Again(また恋したのよ)」で伝説ヒットを飛ばします。
廻がピアノ・ソロで演奏した動画を上に載せました。どうぞご覧ください。メロディを聴いて「ああ、この曲か」と思う方も多いのでは?
さて、そのホランダーはナチスが政権を取ったことで亡命を余儀なくされ、パリに逃れた後、ハリウッドに移り住みます。
そこでたくさんの映画音楽を作りますが、「映画工場」のハリウッドですから、作曲家としての尊敬を払われていたのかどうか、アヤシイ気もします。
そんな中、ビリー・ワイルダー監督との仕事は格が違ったことでしょう。
なんといってもオードリー・ヘップバーン主演の「麗しのサブリナ」、マレーネ・ディートリッヒ主演の「異国の出来事」など、映画史上に燦然と輝く作品の音楽を担当したのですから。
ビリー・ワイルダーもナチスを逃れて亡命した一人です。やはりまずはパリに移住し、そこでホランダーや、のちにハリウッドでアカデミー作曲賞もとったフランツ・ワックスマンなどと共同生活したとのこと。
その後みんなハリウッドに行き、大きな仕事をするようになりますが、やはり大変な苦労を共にした仲間であり、お互い尊敬していた芸術家同士、ということもあり、助け合ったのではないかと思います。
なんと「異国の出来事」(1948年・アメリカ)では、ホランダーの演奏シーンを見ることができるのです!
敗戦後、瓦礫の山が凄まじいベルリン。そこにあるキャバレーでディートリッヒが歌い、ホランダーがピアノを弾くシーン、これは胸を打つものがあります。
さて、林光も映画とは深い関係にありました。
私が一番印象に残っているのは、新藤兼人監督「鬼婆」の音楽です。
戦乱の世の、人間よりも自然が勝っている荒々しいような神々しいような風景に、林光の打楽器のみの音楽が響き渡ります。
ガッツリ組んだ映像と音楽の力、何年経ってもあの衝撃は忘れられません。
吉田喜重監督の「秋津温泉」というのもあり、こちらはまた最大級ロマン派の音楽で、林光の幅広い芸風(?)に驚かされます。
ホランダーも林光も、強い戦争反対の意志を貫きながら、悲壮感がなく、力強いと同時に軽やかで、ユーモアいっぱい。
キャバレー、演劇、映画、ソング、クラシック、そこに優劣はない、という凛とした姿勢が見えてきます。
詩人のジャン・コクトーは「ユーモアを失わないように戦うんだ。ユーモアの欠如は愚の骨頂だよ」と言いました。
ホランダーと林光、ユーモアの精神を貫く2人のソング、これまたユーモアの精神で軽やかに音楽シーンを駆け抜けるHISASHIとのコンサート、7月6日(土)乞うご期待!
今後の全公演チケットはこちら
(7/6は完売いたしました)
2024年6月14日・記
廻 由美子
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