by 廻 由美子
いよいよ「架空庭園の書」歌詞の内容に迫ります!
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2024年11月24日(日)15:30開演 15:00開場
〜失われた楽園を求めて〜
工藤あかね(ソプラノ) x 廻 由美子(ピアノ)
シュテファン・ゲオルゲ(1868〜1933)による詩「架空庭園の書」は古代バビロンにあった、という空中に掛けられた庭園、というわけのわからない摩訶不思議な庭園についての連作詩です。
このフシギ庭園についての本も多いですし、そこは専門家に任せるとして、この詩を見た私の印象としては「ゲオルゲの書いた庭園って、もしかして。。。」という感じです。
「もしかして。。。」とは?
歌詞大意をお読みになればきっとお分かりになります。
弾いてみればこれまたシェーンベルクの書いた音が、この詩を上回るような不思議なエロティシズムを湛えているのです。
ゲオルゲもシェーンベルクも実生活ではかなり手痛い失恋や裏切りにあっているのですが、創作の霊感に導かれている芸術家は、どんな経験も創作エネルギーに変換してしまうようで、ある意味コワイですね。
では、歌詞大意をお読みください。のっけから「庭園」そのものが濃厚な香りを放つ官能的な存在になっています。
でも、受け入れられなくなった時、楽園は別の冷たく暗い顔も見せるのです。
「架空庭園の書」 歌詞大意
1
星の煌めく鬱蒼とした茂みの奥 秘めやかな声が悩みを癒す
大理石の水盤には水が溢れ、茂みに火を灯すため 白い姿が訪れてくる
2
この楽園では林は花園になり 鳥はさえずり 金色の草がざわめく
私はただ一つのことを 求める
3
新参者として あなたの園に入るまで 私にはどんな願いもなかった
あなたに奉仕する者たちの数に 私を加えてください
4
私の唇はこわばって熱い 私が入ったのは他の支配者の領地なのか
でも 高い柵柱の間から、求めるまなざしが送られたように見え
私は思わず跪いた
5
彼女がどの道を通るかを言ってくれ
薔薇を 菫を摘めるように
私の頬を あのひとの足台として差し出せるように
6
あなたを呼び寄せること 会話を紡ぎ出すこと これだけが必要だ
闇の中で生まれる幻影は 朝になると逃げてしまう
そして私は 泣くばかり
7
不安と希望 涙と狂おしい渇きで眠れない。
どんな楽しみも、どんな友の慰めも 願わない
8
今日あなたに触れることができないのなら 私の魂の糸は切れてしまう
熱にうかされる私に どうか清涼を注いでおくれ
9
私たちにとって 幸せはかくも脆いものか 束の間の口づけが何になろう
焼けつく荒地に一滴の雫を注いでも たちまち弾け飛んでしまうのだ
10
黒い茨で囲まれた美しい花々 ビロードのような羊歯 そしてその真ん中にある白くて柔らかな鈴 濡れた唇は まるで甘い果実のよう
11
花で覆われた門の陰 私たちだけの息吹
お互いに触れ合った時の 震え 溢れる涙
あなたは私の傍に 長く とどまっていたのに
12
深い疲れ 聖なる安らぎ 手を添えあい 火照りを鎮める
今は考えてはいけない 壁に蠢く影を
私たちを別れさせようと待ち構えている者たちのことを
13
尖った扇を 稲妻のようにかざし 弄ぶあなたを 小舟に誘ったけれど
あなたはこない
私は 花が散って水に流れていくのを 眺める
14
風に飛ばされる木の葉 砕かれる果実 去り行く者の足音
そんなことを語るのは やめよう
嵐の中の蜻蛉や 不安定に揺れる灯火についても
15
私たちは夕闇の花壇を 小道を 微笑み 囁き 歩いたものだった
彼女は 去っていく
花は色褪せ 水面は青ざめ 棕櫚の葉は鋭く人を刺す
楽園の暗い壁の外 夜は雲に覆われて 重苦しい
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2024年10月10日・記
シェーンベルク・シリーズもあと2回!!
2024年11月24日(日)15:30開演 15:00開場
〜失われた楽園を求めて〜
工藤あかね(ソプラノ) x 廻 由美子(ピアノ)
E.シュルホフ:5つの歌 op.32(1919)
A. ツエムリンスキー:12の歌曲 op.27 より8〜12番(1937〜38)
A.シェーンベルク:架空庭園の書(1908~1909)
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