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「浄夜」について

by 廻 由美子


生誕150年を記念した「新しい耳」シェーンベルク・シリーズ。

その最後を飾るのはこちら!

12月1日(日):15:30開演(15:00開場)

中川賢一(ピアノ)x石上真由子(ヴァイオリン)xマルモ・ササキ(チェロ)

〜洪水の前に〜

R.ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」(1859)より「前奏曲と愛の死」ピアノ・ソロ

C.ドビュッシー:「牧神の午後への前奏曲」(1894) ピアノ・ソロ

A.シェーンベルク:「浄夜」(1899)ピアノ・トリオ版


中川賢一(pf)、石上真由子(vn)、マルモ・ササキ(vc)が遂に登場!

この豪華メンバーについては前回のブログこちらをご覧ください。

今日は12月1日に演奏されるメイン作品であるシェーンベルク「浄夜」についてお話いたしたます。

「浄夜」はシェーンベルクの作品の中でも大変有名な作品で、リヒャルト・デーメルの詩をもとに、濃厚で官能的な音楽が繰り広げられていく、とてもロマンティックで人気の高い曲です。

浄夜については「新しい耳」のブログ「1900年までのシェーンベルク」にも書きましたので、そちらも参考にしていただけると幸いです。

そのデーメルの詩の大意は、

月夜を男女2人が歩んでいる

女が言う

私は子供を宿しています。あなたの子供ではありません

私は見知らぬ人に身を任せ、そんな自分を祝福しさえしたのです

でも今になって、人生は私に復讐した

私は、あなたと、今になって巡り合ったのです

男が言う

君の子供は君の重荷にしてはならない

この宇宙はなんと美しい輝きを放っていることか

君はその子を僕の子として産んでおくれ

月夜の下、2人は抱き合ってキスをする


というもので、全てが深い愛によって浄められる夜の表現となっています。

その後の人生で2人がどうなったか、子供はどうなったか、本当に人生の最後まで許したのか、途中で大喧嘩にならなかったのか、なんてことはロマン派詩人は書きません。

あくまでも「深い愛」がうたわれるのです。

そしてシェーンベルクの音楽は詩を超えるほどの官能的な深い愛で、何度も何度も「深い愛」の波が襲ってくるようです。

シェーンベルクがワーグナーの影響を受けたのはもちろんですが、ワーグナーがどんなに官能を描いてもどこか「神聖」な感じがするのに対し、シェーンベルクは、特に初期の作品は、もっと「アブナイ」感じがします。

シュトイアーマン編曲によるトリオ版で演奏されるシェーンベルク「浄夜」には、弦楽6重奏版とは一味違う魅力があります。

ピアノ、という楽器の特性は、宇宙的輝きやスケール感を表現するのにピッタリですし、3人、という少ない人数、しかも豪華メンバーによる「音楽的対話」が聴きものです。

12月、というシーズンにもピッタリなコンサート!

ぜひお聴き逃しなく!


2024年11月1日日・記


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