小倉美春公演・レポート
- megurin37
- 3月31日
- 読了時間: 4分
by 廻 由美子

【新しい耳】@B-tech Japan 2025〜響き合う20年代!〜
3月9日にシリーズがスタートしました!
トップを飾ったのは
小倉美春(作曲・ピアノ)〜ピアノ表現の可能性2020s〜
です!
小倉美春: Pas+Labyrinthe(2018)
小倉美春: Nijimi(2023)
小倉美春: Rifrazione (2024)
という自作自演プログラム。
作曲者自身が曲目を解説トークし、弾く、という、とても貴重な時間となりました。
作曲家の言葉、これは我々演奏家が血眼になって探し求めるもので、
「あの曲についてどこそこの本に書いてあった。」
「この曲については手紙に一行だけ言及があった。」
「何々について語ったことをダレソレが書いていた。」
など、ワンワン言いながら探すわけですが、それがいますぐ、目の前で話を聞ける、という贅沢さ。
また、自作自演についても、モーッアルトやショパンの自作自演は、いくら聴きたくても、それは叶わぬ夢、というものですが、現在生きている作曲家ならばその場で体験することができますよね。
というわけでとても贅沢、かつ充実、かつ面白い空間が出現しました。
第1曲目の
Pas+Labyrinthe(2018)
これは廻としては、出来立てホヤホヤの頃から何度も聴いたことのある作品なのですが、作品がグングン大きくなり、葉を繁らせ、花を咲かせ実をつけていくのを目の当たりにし、驚愕した次第です。
残響を意識したという「Pas」は、残響が次の残響と混じり合い、また違う色彩を生み出していく作品で、会場は一挙に、光る海、になったようでした。
続けて演奏された「Labyrinthe」は、様々なリズムが重曹的に響きあい、それらはしなやかに伸縮し、まるで大自然の生み出すリズムのよう。
廻「エーッ!曲ってこんなに成長するんですね〜!」
小倉「作品は手を離れますから、勝手に成長してくれます。」
それって小倉さんが成長した、ということなのでは、と思いつつ、次の Nijimiへ。
ピアノ、という音程がはっきりと分けられた楽器で、どう「音程の滲み」を出すか、音と音の境界線をなくしていくか、ということに着目したというNijimi。
この作品では、出された音が発色し、その瞬間に色は空中でまた色を変え、前の音、次の音色と混じり合い、別の色になっていきます。
化学変化でピカッと光るものあり、深い淵へ沈むものもあり、ジワジワと変化するものもあり、マジックが起こり続けていきました。
「小さい時から、スケールの練習は1音1音ゆ〜っくり弾いて、倍音を聴くのが楽しみだった」という小倉さんです。
廻「どうしても1音を『1音』と、とらえがちですが、音って1音鳴らすと、実はたくさんの音が鳴りますよね〜」
小倉「そうですそうです。打楽器なんかだと、例えばドラとか鳴らしたら色んな音が鳴るのがわかると思うんですけど、ピアノも同じですね」
などなど、他にも聞きたいこともたくさんあったので、前のめりになってインタヴューし、たくさんの「極意」を話していただき、充実の時間となりました。
そしていよいよ最後のRifrazione
Nijimiをさらに発展させ、音の波動で時空を超えていくような世界が繰り広げられました。
30分近い作品でしたが、聴いていると、不思議の国に連れて行かれ、ある種のトランス状態になるので、時間の感覚がわからなくなってしまい、まさに「一瞬の永遠」でした。
パッと見るとスリムで可愛らしい感じの小倉美春さんですが、強靭な精神と、絶対ブレない音楽哲学があります。
そしてこれは私が以前から感じていたことですが、彼女の音楽は、実に精密に書かれているのに、そこには必ず、おおらかな自由さがあります。
ときおり、ゴソゴソ、ガサッ、グジャラ〜ン、ゴワンゴワン、など大自然が立てるような音がし、とても原始的、なものが彼女の音楽の中に存在するように思います。
音が始まる前の前兆、消えていったあとまで残る余韻、これが常にあって、音楽は太古の時代から続いてきた、その波動は止まることがない、ということを感じさせてくれます。
これからどんな音楽を聴かせてくれるのか、楽しみでなりません。
2025年3月13日 記
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